人々の信仰心が生んだフィレオフィッシュ
バーガーと言えば、ジューシーなお肉のイメージが強いですが、マクドナルドでは魚を使用した「フィレオフィッシュ」が50年以上も昔から販売されています。魚を使った珍しいバーガーはどうして誕生したのでしょうか。始まりは、アメリカのオハイオ州シンシナティ。この土地でフランチャイズオーナーをしていたルー・グルーンには大きな悩みがありました。それは、毎週金曜日にほとんどのお客様が来なくなってしまうということ。なぜなら彼の店舗の周辺にはカトリック教徒が多く、カトリックでは金曜日に肉を食べてはいけないという決まりがあるためでした。何とかこの状況を打開しようとした彼は、肉以外のものをメインにした商品の開発に取り組んだのです。その結果、魚をはさんだ商品がおいしくできあがりました。マクドナルド本社は当初この新商品の販売を渋っていたものの、彼の熱意に圧倒されとうとう販売許可を出したとか。しかしお客様からはとても好評で、グルーンの店舗の金曜日の売上はなんと約5倍に急上昇。総売上も30%近くアップしました。
この大成功を受けマクドナルドとして正式に、魚を使用した商品を販売することになりました。グルーンの店舗で使用していたオオヒラメは供給量に限りがあったため、代わりにハマグリにパン粉をまぶした商品を販売したのですが、調理法が難しくて失敗。そこから1年かけて漁獲量が多いマダラに行き着き、ようやく「フィレオフィッシュ」が誕生したのです。現在、日本マクドナルドではアラスカ産のスケソウダラを100%使用。2019年には冷凍工程を従来の「2回」から「1回」に変更したことで、より新鮮なうちに素早く加工できるようになり、おいしさや風味がますますアップしています。困り果てたグルーンの“苦肉”の策から生まれた「フィレオフィッシュ」が、こんなにも世界中で愛されることになるなんてまったく驚きですが、ひょっとしたら、神様だけは知っていたのかもしれませんね。
※1965年販売開始。日本での販売開始は1971年。