風流なネーミングが、月見バーガーを輝かせた?
大きくてまんまるなたまごが特長の「月見バーガー」。プリッとした白身、まろやかな味わいの黄身に、ジューシーな100%ビーフパティとグリルしたスモークベーコン、クリーミーで濃厚なトマト風味のオーロラソースが絶妙にマッチした一品です。1991年の販売開始時から毎年秋に登場しているので、すっかりお馴染みの方も多いことでしょう。CMや店頭で見かけると「もう秋なんだな」という気持ちになるかもしれませんね。日本マクドナルドでは春夏秋冬それぞれの季節に合わせた期間限定バーガーを販売していて、「月見バーガー」は“四季バーガー”の第一弾でした。
しかし実は開発当時、このバーガーを秋の代名詞にしていこうという考えはまったくありませんでした。“バーガーに入っているとうれしい食材ランキング”上位のたまごを使ったメニューを作るという目的で、商品開発がスタートしたのです。ではどうして秋の販売に決まったのか。その理由の一つに“たまごの需要と供給”が関わっています。たとえば年末年始はクリスマスやおせちの具材として需要が高まり、多くのたまごを安定的に手に入れることが困難になります。より多くのお客様においしい商品をお届けしたいという想いから、1年の中ではたまごを比較的安定して仕入れることができる秋の販売を決めたのです。こんなふうに販売時期は決まったのですが、“秋バーガー”としての運命が決定づけられたのは商品が完成した段階での試食会でした。当初、メニュー開発のメンバーはこの新バーガーを「ベーコンチーズエッグバーガー」というネーミングで販売したいと考えていました。しかし、試食会で当時の社長、藤田 田は新商品のバーガーをひとくち食べるとしばらく黙り込み、そして突然こう叫んだのです。「これは月見バーガーや!」。まんまるなたまごから「お月見」を連想し、しかも秋の販売ということで藤田は、“月見”というネーミングを主張しました。バーガーとしてはあまりに和風の名前だったため、社員の中には売れるか心配になった人もいたとか。ですが、昔から馴染み深い“月見”という名前とたまごを月に見立てたキャッチーな見た目、たまごのまろやかなおいしさが日本人の心を大きくすぐり、晴れてヒット商品の仲間入り。秋の風物詩としてすっかり定着しました。
現在までに「大月見バーガー」や「きのこ月見」、「濃厚ふわとろ月見」など様々な進化系商品が誕生しました。またこの月見の世界観はバーガーだけにとどまらず、ドリンクやスイーツといったサイドメニューにまで広がっています。「秋になると食べたくなる」。多くのお客様にそう言っていただける理由は、「月見バーガー」がおいしいだけでなく、季節の移ろいを愛でる日本人の感性にぴったりマッチしたからなのでしょう。
※1991年初登場。