誰かの命を、みんなで救う
「チェコのメディカルラリーに参加した際、子供たちが当たり前に応急手当てを実施する姿を見て感動したことが、取り組みをスタートしたきっかけです」。そう話すのは、済生会千里病院で救急救命医として活躍する伊藤先生だ。日本では、応急処置や一次救命処置について認知・理解が低く、有事の際に自ら行動できる人もそう多くはない。「救命活動に対するマインドの醸成や学ぶ機会を届けたい」。そんな想いから千里の地で、日本のメディカルラリーはスタートした。
「傷病者発見の通報を受け病院へ搬送するまで数十分はかかります。だからこそ、医療がどれだけ進化しても、傷病者を発見した人がその場で処置をできることが大切なのです」。子供の頃から学ぶことで「誰かの命を救うために自分にできることがある」と考えてもらうこと、そして、いざという時に主体的に動けるようになること。これが、救命率向上や、その後の後遺症をできる限り減らすために重要だ。
そして、多くの方が応急処置や一次救命処置について学ぶことは、処置に臨む人の負担を減らすことにもつながるという。「たとえば学校では先生が一人で数十人の子供たちの安全を守らなければいけません。子供たちにも知識があれば、AEDを持ってきてもらったり助けを呼んでもらったりと、サポートをお願いできますよね」。
現在、メディカルラリー開催のノウハウをパッケージ化し、全国へ展開しようと取り組みを進めているという。他にも、教育委員会と連携し義務教育で救命活動について学べるように推進しており、2025年には吹田市のモデル校で授業がスタートする予定だ。
「今回のメディカルラリーのように、子供たちやそのご家族とつながりの深いマクドナルドと連携することは、取り組みの周知拡大や参加のきっかけづくりになると感じます」。そう語る伊藤先生。より多くの子供たちに救命活動について学ぶ機会を届けることが、その家族や友人、周囲の方々の意識も高め、ひいてはたくさんの命を救うことにつながるのだ。