STORY#088

一つの倉庫が、みんなの“秘密基地”に生まれ変わった日。

2024.08.02北海道

POINT
  • ・病気と向き合う子供とそのご家族のための滞在施設「ドナルド・マクドナルド・ハウス さっぽろ」(以下、「さっぽろハウス」)に、子供たちが落ち着いて過ごせる部屋「センサリールーム」が開設された。
  • ・「センサリールーム」とは、光や音などで五感を心地よく刺激することで、利用者の気持ちを落ち着かせるよう整えられた空間のこと。
  • ・開設資金をクラウドファンディングで募ったほか、隣接する病院や日本マクドナルドフランチャイジーとの連携のもと、地域一丸となって、子供たちとそのご家族を支えていく。

病気と向き合う子供やそのご家族のために、もっとできることはないだろうか?

「さっぽろハウス」前ハウスマネージャー福原さんらの想いが「センサリールーム」という形になりました。これは光や音などで五感を心地よく刺激することで、利用する子供やご家族が落ち着いた時間を過ごせる特別な空間です。

構想からおよそ1年。待望のお披露目会を迎えた「さっぽろハウス」を訪ねました。

「自分を大切にする時間」を持っていただきたかった

#
リラックスして過ごせるよう、照明や音響はゆっくりと変化する

キョロキョロしたり、ペタペタ触ったり、ノシノシと踏んづけたり——。

「さっぽろハウス」に滞在する乙茂内ファミリーは、ちょっと不思議なこの空間に、すっかり夢中になっています。

そう、幻想的な雰囲気が漂うこの場所こそ「さっぽろハウス」内に設けられた「センサリールーム」です。

水の泡が湧き出す円柱や光ファイバーの束、プロジェクターの映像など、光や音で五感が心地よく刺激され、子供も大人もリラックスして過ごせる空間になっています。

どうしてこのような空間を作ろうと考えたのでしょうか?

きっかけは、「さっぽろハウス」の前ハウスマネージャーで、現在はフィールドコンサルタントを務める福原洋勝さんの想いに端を発していました。

#
前ハウスマネージャーの福原 洋勝さん。背景のリンゴの木には、クラウドファンディングの支援者427名のイニシャルが記されている

「子供やご家族が、ご自分を大切にできる時間を届けたかったんです」。

福原さんは「さっぽろハウス」のハウスマネージャーとして、いつもつきっきりで子供を看病し、気持ちが張り詰めているご家族を間近に見てきました。

そうした姿を見て、“お子様にもご家族にも、もっとご自分を大切にする時間を届けられないか”と考えるようになったそうです。

「これをきっかけに、昨年は裏庭に『キッチンガーデン』を設けることができました。でも、他にもできることはきっとある。そんな想いがあったんです」。

とはいえ具体的な案が浮かんだわけではなく、気になることがあれば手当たり次第に調べる日々。その中で見つけ出したのが、「センサリールーム」でした。

「さっぽろハウス」内には倉庫が6つあります。うまく整理すれば、1つぐらいは空けられるはず。

福原さんは具体的な検討に乗り出しました。

※「キッチンガーデン」にまつわるSmile Storyはこちら

見て、聞いて、触って、世界がわかる“秘密基地”を

「さっぽろハウス」への「センサリールーム」の設置を応援してくださったのが「さっぽろハウス」に隣接する「北海道子ども総合医療・療育センター」(愛称「コドモックル」)の、髙室 基樹センター長です。

「コドモックル」は道内唯一の小児総合専門病院で、道内全域から専門的な医療やリハビリを必要とする子供が集まります。髙室センター長は言います。

#
北海道子ども総合医療・療育センター センター長の髙室 基樹さん。「センサリールーム」の設置を応援した

「遠方から当院に通う子供とそのご家族にとって、『さっぽろハウス』は本当に貴重な存在です。

しかし、それでも通院や入院が続けば、心が疲れてしまうこともある。そんなときに、この『センサリールーム』があれば、安らげる時間をお届けできるのではないかと考えました。

また、光や音で五感を刺激することは、子供たちの発達にもよい効果が期待できます。子供たちは、見たり聞いたり触ったりして、世界を認識するからです」。

そもそも福原さんが「センサリールーム」の存在を知ったのは、パナソニック エレクトリックワークス社による同ルームの取り組みを知ったことがきっかけでした。しかしすぐには設置を決断できず、髙室センター長やリハビリ担当の先生と活用方法について協議を重ねたり、体験会で利用ご家族の意見をお聞きするなど、考えに考え抜いた末に、クラウドファンディングに踏み切ったのです。

打ち出したコンセプトはずばり“五感をくすぐる秘密基地”。「キッチンガーデン」に続く2回目のクラウドファンディングです。それも、目標額は前回の約3倍となる450万円。簡単には支援が集まらないことが予測されました。実際、終盤まで思うように進まず、福原さんは「ずっと不安でした」と振り返ります。

しかしそれでも、地域の方々を中心とする多数の支援者の協力によって、最後には目標額を上回る500万円以上もの支援が集まりました。

大切な地元に、「スマイル&ハッピー」を届けたいから

なぜこれほど多くの支援が集まったのでしょうか?

背景には、精力的に「さっぽろハウス」の支援を続ける、北海道に根を張る日本マクドナルドフランチャイジーの存在があります。お披露目会当日も、道内のフランチャイジーを代表するオーナーの方々が開設のお祝いに参集しました。

「さっぽろハウス」の最寄り店舗である手稲星置店を経営する、株式会社マルエイフードシステムズの榮 浩二オーナーも、当日駆け付けた一人です。「『さっぽろハウス』は私にとって特別な存在」と語ります。

#
株式会社マルエイフードシステムズの榮 浩二オーナー。地元札幌を愛し、「さっぽろハウス」への支援にも力を入れる

「私は札幌生まれ、札幌育ちです。かつては手稲星置店の店長でもありました。

『さっぽろハウス』のボランティアにも日常的に参加してきましたし、そこで学んだ“人の役に立つ嬉しさ”が、経営者となった今では“人の心にスマイル&ハッピーをお届けする”という経営理念につながっています。

『センサリールーム』の開設は、より多くの方々の笑顔につながるものです。私たちも日々の店舗運営の中で、これまで以上に「さっぽろハウス」の積極的な周知や支援を促していきますよ。

一丸となって、地元にスマイルを届けたいですから」。

支援者の想いを“より良い形”に

たくさんの想いが紡がれ、完成を迎えた「センサリールーム」。

これから「センサリールーム」を含む「さっぽろハウス」を支えていくのは、新たにハウスマネージャーに就任した長谷川 みどりさんとボランティアの皆さんです。

これからこの「さっぽろハウス」をどんな存在にしていきたいか? 長谷川さんはこう答えてくれました。

#
ハウスマネージャー 長谷川 みどりさん。これからの「さっぽろハウス」をつくっていく

「『センサリールーム』は、地域の支援者の方々の“少しでも多くの病気の子供とご家族を支えたい”という想いが形になったものです。

その想いをしっかりとお届けするためにも、利用者の方々に寄り添いながら、少しでもホッとできる、心安らげる場所にできるよう、ボランティアの皆さんとともに取り組んでいきます」。

たくさんの支援が集まったからこそ、「さっぽろハウス」の皆さんはより良い在り方を検討し続けています。

例えば、「センサリールーム」の利用対象者を、「さっぽろハウス」に滞在するご家族だけでなく「コドモックル」に入院する子供とそのご家族にまで広げたこともその一環。利用開始後の状況を見ながら、ゆくゆくは外来受診の子供とそのご家族まで対象に加えることも検討しているそうです。

「支援者の方々の想いをより良い形で還元していくのが私たちの役割です。ボランティアの皆さんと力を合わせて、より多くの子供とご家族の力になっていきたいと思います」(長谷川さん)。

“秘密基地”も、「さっぽろハウス」そのものも、その形はきっと、利用者の方々とともに変化し続けます。病気と向き合う地域の子供たちとそのご家族に寄り添いながら。少しずつ、より良く、育っていくはずです。

#
「さっぽろハウス」内観。手前左の扉が「センサリールーム」
登場した店舗
さっぽろハウス
登場した人/会社
北海道立子ども総合医療・療育センター
日本マクドナルド(株)フランチャイジー 株式会社マルエイフードシステムズ
パナソニック エレクトリックワークス社
活動内容
DMHC

この記事のタグ

関連するストーリー

TOPに戻る